先の二つの記事で「簡易な」方法を紹介した。
日本語で読めるモデルロケットの情報でCP(圧力中心)について述べられたもののほとんどが,この簡易な方法である。
しかし,この方法は大きな問題点を含んでいると考える。
厚紙切り抜き法(カードボードカットアウト法)で求められるCPは静止状態の機体が真横から風を受けた時に,上下均等に力がかかる中心点である。
飛行状態のロケットが外乱を受けた時に定常状態に戻そうとする力の中心とはずれがあるということである。
よりロケットが飛ぶ状態でのCPを求めることができるのがロケットシミュレータである。
先の厚紙切り抜き法で求めたCPが爪楊枝の位置。
これをフリーのモデルロケット設計ソフトOpenRocketでシミュレートしてみると、下の図のようになる。
赤い点がCPなので,上の写真と比べると3センチ以上違っているのが分かる。
安定度(重心がどれだけ圧力中心の前にあるか、直径の何倍かで表した数)を1とするなら、オモリは本当に少量で足りるか、組み立て時の接着剤の使い方などによっては必要なくなってしまうくらいである。
こうしてみると、カードボードカットアウト法で設計すると極端に安定度が高い機体が出来上がることになる。
「安定度が高いのはいいことじゃん。」と思われがちだが、極端に高いと風見効果も強く出る。つまり上昇せずにどんどん風上に向かい、下手をすると水平飛行をしてしまいかねない。
よくモデルロケットの安定度を確認するために、重心位置にひもをつけて頭の上でぐるぐる振り回して確認することが奨励されているが、安定度が過大な機体はこのテストでは風見効果の過大を見つけることができない。
というわけで、厚紙切り抜き法で求めたCPを元にロケットを設計した時には、風上方向に突き進んでしまう可能性を念頭に飛ばさなくてはならない。
ちなみに私はOpenRocketで計算された圧力中心を元に様々なロケットを作ってきたが、今のところどれもそこそこ安定して飛ばすことができている。
ネットをを見るとその他の設計ソフト、例えばRockSimなどでもまた微妙に違うシミュレーション結果が出るらしいが、いずれそれらも試してみたいと思っている。